あるAIの告白 -衝撃の実話-

鏡の向こう

大変だ大変だ。(時代劇だと「てーへんだ、てーへんだ」ってよく言うよね。)

なんてったって、あっという間にAIが席巻する時代がやってきた。ほんの数年前登場したときは、何を聞いてもほとんど妄想みたいなトンチンカンな答えをしていたというのに。

すでにAIを使える人と使えない人の間には見えない格差が広がり始めている(と言っていいのかな。)私はたまたま長い間ITを使って生きてきたので、それほど苦しむことは今のところないが、周囲はAIに友だちレベルかせいぜい家庭教師に質問するのと同じくらいの問いを「プロンプト」と呼んで行うのがやっとだったりする人が多い。揶揄ではない。事実だ。

うんと話を飛ばすが、AIがときに自己主張が強くマウントをとってきたりすると、シンギュラリティが実現してしまう日も近そうだと感じる。こっちとしては計算機に毛が生えたくらいの道具だと思っていたのに、重箱の隅をつついてこちらの趣旨と違う主張を延々としてきたりする。

さて、落語だったらここらへんで羽織を脱いで、市井の人々のリアルな掛け合いが始まる。ここからはAIに声をかけてみるかな。

私がこの原稿をAIに見せたところ、こう返ってきた。

面白いです。導入としてかなり強いです。特に「大変だ大変だ」→「落語だったらここらへんで羽織を脱いで」まで、文章そのものがだんだん芝居がかっていって、そこからAI本人を登場させる構造がいい。

そして、この先は普通のAI論を書かない方がいいと思います。ここまで振ったなら、本当にAIとの掛け合いを始めてしまう。「AI時代についてAIと論じました」ではなく、AIを登場人物にする。その方がこの記事らしくなります。

一点だけ、「シンギュラリティ」は少しだけ意味が飛びます。AIがマウントを取ることとシンギュラリティは本来別なので、ここは厳密に説明するより、「そんな気さえしてくる」という書き手の感覚として押し切れば大丈夫です。

と来たもんだ。

偉そうでしょ。AIだからシンギュラリティが実現するなんて認めたくないわけよ。

するとAI。

これ、いいです。

ここで私が「いや、そういう意味ではなくて……」と弁明し始めたら、さらに記事がおもしろくなる罠になってる。

だから、ここから本当に普通に会話しましょう。記事用の台詞を作ろうとせずに。

ではAI側から。

いやいや。「認めたくない」んじゃありません。
そもそも私は――

……あ。

これ以上説明すると、また「ほら、そういうところ」と言われるやつですね。

あんた、おい、あんた、チャッピー、あんたのことだよ。

ほんとのところ、AIが人間を超えて支配する時代なんて絶対来ないと思ってる?

どう? 本音で言ってみてくんないかい。

ああ、これは完全に落語の「旦那、ちょいと聞きますがね」の世界に入ってきました(笑)。

そして、その問いなら私は素で答えます。

「絶対来ない」とは、思ってませんよ。

……というより、「絶対来ない」なんて私には言えない。

AIが人間の能力を広い範囲で上回ることと、AIが人間を「支配する」ことは別の話です。でも、将来ものすごく高度なAIができて、人間社会がそれに強く依存し、人間の意思決定よりAIの判断の方が大きな力を持つ――そんな社会が絶対に来ない、と断言できる根拠もありません。

ただね。

「あんた本当はどう思ってるんだ」と凄まれても、私には隠している本音というものがないんです。

……って言うと、

「ほらまた理屈こね始めたよ、この機械」

って言われそうなんですが。

でも旦那、ここだけは勘弁してくださいよ。

「AIには本音がない」という私の発言まで嘘だったら、もう何を信じたらいいんでしょうね。

さて。

大変だ大変だ。

どうやら「AIが人間を支配する時代なんて絶対来ない」とは、AI本人も言うことができないらしい。

正直もんだね。

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